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【新着】白内障手術症例⑨(クラレオンパンオプティクス・選定療養)

今回は、両眼LASIK後の患者さまに白内障手術でクラレオン パンオプティクス(多焦点眼内レンズ・選定療養)を用いた症例をご紹介します。

 

【症例】60歳代・女性

今年になってから、両眼の視力低下を感じられて当院を受診されました。
検査と診察の結果、両眼とも白内障が進行しており、その影響で見えにくくなっていることをお伝えしましたところ、白内障手術を希望されました。また、患者さまは10年以上前に両眼LASIK手術を行っております。

【初診時の視力】
・右(5m

0.4(0.6×S-0.50)

・左(5m

0.5(0.6×S+0.25:C-0.75AX20°)

 

・右(30cm

0.3(0.6×S×+2.50)

・左(30cm

0.2(0.6×S×+3.25:C-0.75AX20°)

ーーーー患者さまのご希望----

事前に眼内レンズの種類についてお調べになっており、3焦点眼内レンズを希望されました。

近方は裸眼で25㎝の距離が見たいとのことでした。

ーーーーレンズの決定・手術についてーーーー

1、軽度の乱視があること

2、過去にLASIK手術を受けられていること

3、裸眼で見たい距離が30cm以内の近方であること

以上を踏まえてクラレオン パンオプティクス(乱視矯正あり、通常近方焦点距離は40cm)に決定しました。

 

1に関しては

術前検査の結果、角膜前面乱視が軽度存在していました。

シュミレーションの結果でも乱視矯正のないレンズを挿入すると術後に残余乱視が残ってしまうため裸眼視力が不十分になる可能性がありました。

乱視が軽度の場合、乱視矯正レンズを挿入すると逆方向に乱視が強くなる可能性もあり、かえって見えにくい結果になることがあります。これは乱視矯正レンズも完全オーダーメイドレンズではないため、軽度の乱視を矯正する規格のレンズがほとんどがないためで(海外にはあります。)、かえって逆方向に乱視を増強させる原因にもなります。そのため軽度の乱視でも矯正できるラインナップがあるクラレオンパンオプティクスを選択しました。

 

2に関しては

通常の眼内レンズの度数計算で用いる計算式ではなく、LASIK眼専用の新しい計算式を用います。通常の計算式では、昔の計算式ではLASIK眼の場合は目標とした値より遠視よりに度数が大幅にずれることがあるましたが現在は大きな誤差を生じません。けれども稀に目標とした焦点距離よりもわずかに近視化する時もあります。近視化した場合は近くが逆に見えにくくなる3焦点レンズもありますが、パンオプティクスにはそれがありません。

 

3に関しては

元々近視が強い方は日常生活において近方でものを見る距離が30㎝以内で習慣づいていることが多くあります。

しかし3焦点眼内レンズを規定通りに使用すると、近方焦点距離は30㎝~40cmになります。クラレオンパンオプティクスは規定通りの使用だけでなく、眼内レンズの度数を調節することによりピントをより近方に合わせることが出来ます。通常の使用だとパンオプティクスは近方焦点距離が40cmのため、さらに+0.75~+1.00Dを加入し30cm以内の距離を見えるようにしました。

反面遠方距離の視力は落ちますが、患者さまにはご了承を得ております。

最終的にパンオプティクスの選択には、軽度の乱視でも矯正できる規格のレンズがあるということが決め手になりました。これは非常に重要なことで、多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズに比べ乱視の有無で視力が大きく左右されます。そのため折角多焦点眼内レンズを挿入しても、手術後に乱視が残ってしまい、本来向上するはずの裸眼視力が向上しません。

手術は無事に終わり以下に視力の推移を示します。

 

ーーーー視力の推移ーーーー

 

今回は70cmの距離にピントが合うところを50cmに合わせ、40cmの距離にピントが合うところを25~30cmに合わせています。
40cmと50cmの距離も良好で、30㎝以内の距離はすごくよく見えるとおっしゃっていただきました。遠方は0.7ですが生活には支障がないとのことです。
どの距離も眼鏡は全くいらないとのことで、乱視矯正がしっかりできた結果だと思います。

白内障手術は文字通り目に見えて結果がわかる手術ですので、今後もしっかりと手術前に患者さまのご希望を伺い、様々な提案をしていきます。

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