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白内障手術症例②(成熟白内障)

今回は、「成熟白内障」についてご紹介します。

成熟白内障は、水晶体全体に濁りが生じ、外から見ても白く見えるほど白内障が進んだ状態になります。濁りは、白や茶色が混じったように見えることもあります。

白内障は、進行期から軽度な順に4段階に分類されます。その中で、見えづらいなどの自覚症状もあり、進行している状態を「成熟白内障」といいます。

・初期白内障

・中期白内障

成熟白内障

・過熟白内障

症状は、室内でもまぶしさを感じたり、全体にかすんで見える、視力低下などの症状になり、日常生活に支障が現れてきます。症状が進行すると、ほとんど見えていない状態になってきます。「成熟白内障」をそのまま放置しておくと手術の難易度が上がるだけでなく、合併症により他の眼の病気を引き起こすことがあります。

成熟白内障の手術の症例をご紹介したいと思います。

 

症例 (60代・女性)(右眼:成熟白内障)

左眼の視力低下を気にされて、来院されました。

数年前より右眼はほとんど見えず左眼のみで生活されていましたが、3ヶ月くらい前より左眼も見えなくなってきたとのことでした。右眼は成熟白内障で、両眼ともにほぼ見えていない状態でした。

【写真1】右眼:水晶体全体が濁って白くなっており、成熟白内障。

 

【写真2】左眼:かなり濁りが強い。

本来であれば手術の順番は、視力が悪い眼から行います。しかし、右眼の成熟白内障は、術後視力がでるまで時間がかかる可能性がありましたので、ご本人と相談して、まずは安全に日常生活をおくれるよう早期に視力回復が見込める左眼から手術を行うことにしました。

左眼の白内障手術を先に行い、手術後3日目には0.6の視力になりました。そして、左眼手術から1週間後に右眼の成熟白内障の手術を行いました。
右眼の手術から術後3日目には、両眼0.8となり、手術前に比べ見えるようになったとおっしゃっていました。

視力検査の経過

成熟白内障は、最初に前嚢を円形に剥がしますが、濁りと袋(前嚢)が癒着を起こし、上手に剥がすことができないことがあります。この患者さまも同様に癒着を起こしていたので、八重式剪刀(虹彩剪刀)で濁りと前嚢を同時に切除し円形に前嚢を剥ぎました。その後、かなり硬くなった核を超音波で破砕し濁りを取り除き、眼内レンズを挿入し無事手術終了となりました。

 

「成熟白内障」は、白内障手術の中でも難症例といわれます。
その他には、外傷性白内障・アトピー性白内障、落屑症候群、前立腺肥大薬であるαブロッカーの内服による術中虹彩緊張低下症候群(IFIS:Intraoperative Floppy Iris Syndrome)などもが難症例にあげられます。
難症例といわれるのは、手術の中で合併症が起きやすくなることが最大の理由で、手術の流れは通常の白内障手術と変わりませんが、(1)と(2)は通常より注意すべき点です。

(1)成熟白内障で最も注意するのは、前嚢切開(白内障の周りは嚢と言って透明な袋で包まれており手術時は袋の前の部分である前嚢を円形に剥がします)の際に、前嚢と水晶体皮質が癒着を起こして上手く前嚢を剥がせない可能性があるということです。

今回も、水晶体皮質と前嚢の癒着が強かったですが、水晶体皮質と一緒に尖刀で前嚢を切り取り無事に前嚢切開を行えました。これをきれいに行えないと後嚢が破れ水晶体が眼底に落下する原因になるため、より慎重な手技を要します。

(2)成熟白内障の特徴である水晶体の濁りが強いほど、水晶体の核を超音波で砕く際の破砕出力(超音波の力)が大きくなります。破砕出力が大きくなれば、創口(器具を挿入している角膜の切開部分)が火傷のようになるので、できるだけ超音波を使わず破砕出力が大きくならないように濁った水晶体を取り除きます。

(3)通常の白内障手術と同じように、眼内レンズを挿入して終了です。

 

「成熟白内障」のように難症例といわれる白内障の患者さまには、通常より手術時間が少し長くなる場合があることを事前にお伝えしています。普通の白内障手術は、5分くらいで終了しますが、前嚢切開や水晶体の核を超音波で砕く際には、より丁寧に行いますので少し時間がかかる場合があります。

 

白内障は、「成熟白内障」まで進むと、手術の難易度が上がるとともに合併症のリスクも高まります。これまでに白内障と診断されて、見えにくさを感じながらもそのままにしている方、症状に変化はないけれど一年以上眼科に行っていないという方も、年に一度は眼科で診察を受けることをおすすめします。

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