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白内障手術前の検査について

白内障手術前の検査について、ご質問いただくことがあります。
他院で白内障と診断されていて当院に手術のご相談でご来院いただいた場合、すでに検査をしていますがまた検査が必要ですか?というご質問や、同じ検査を手術前に数回行うため、何か他に悪いところがありますか?などのご質問をいただきます。
検査前には必ず検査の目的や必要性についてご説明させていただいておりますが、やはりご不安になられる方もいらっしゃいます。
簡単になりますが、白内障手術前の検査項目や、検査データの見方について、乱視の方の眼内レンズの決定に関わる検査についてご紹介したいと思っています。
下記で検査結果とともに
【検査例1】眼軸長などの検査について(目の画像があります。苦手な方はご注意ください)
【検査例2】不正乱視について(角膜形状解析)
としてご紹介します。

始めに、白内障手術が必要か、行うことが出来るかを判断するために、白内障以外に眼の疾患がないかを検査します。当たり前ですが、網膜やその他に疾患がある場合は、先にどちらを治療するか、または治療と同時に白内障手術を行うことを検討します。
他院にかかられてそちらで検査をされた場合でも、下記の検査は当院でも必ず行います。先生によって疾患の判断は多少異なる場合があり、手術を執刀する私自身がしっかりと確認します。
[検査項目]
・視力検査
・屈折検査
・角膜曲率半径
・眼底検査
・角膜内皮細胞数
・角膜の頂点から網膜の中心部までの距離(眼軸長)
・角膜形状解析
また、血液検査も行います。血液検査の結果などで、ご自身が気づいていない内科的疾患(糖尿病や高血圧など)が発見されたりすることもあります。結果的に、先に内科的疾患の治療を優先したり、患者さまのかかりつけ医と連携し白内障手術についてご相談することもあります。これまでに、内科的疾患の治療を急ぐようなケースもありましたので、検査結果によっては手術を延期することもあります。

最近の白内障手術では、患者さまの見え方に対するニーズが多様化している中で多焦点眼内レンズや乱視矯正眼内レンズなどの見え方にこだわった眼内レンズが登場し、術後の見え方の選択肢が豊富になってきました。よって、検査結果がより重要なため、より精度の高い検査が必要です。
とくに多焦点眼内レンズの場合には、手術前の検査(眼軸長や角膜の形状解析)によって、乱視度数、乱視軸、あるいは不正乱視を正確に調べることが大変重要となっています。

【検査例1】
(表1)から眼軸長、角膜曲率半径、乱視度数、乱視軸を確認することが出来ます。
右眼 眼軸長(赤枠)乱視度数(青枠)乱視軸(黄枠) を表しています。
縦に10行数値があり、11行目にAvg(平均)が算出されます。検査の誤差を修正し正確な数値を出すために10回測定してAvg(平均)を取るようになっています。右眼は、数値にばらつきがなく、ほぼ同じ数値で平均となっています。
次に、左眼 乱視軸(緑枠) を表しています。
先程の3つ()のデータと比較して、10行の数値がばらばらになっていることがわかります。これはドライアイによる影響で、角膜の表面の涙液層がまばらなため起こる現象です。当院では、この検査を最低3回は行うことで精度を上げ、さらにAvg(平均)を3回比較します。
(表1)

【検査例②】
白内障手術の際に乱視矯正も同時にする場合は、乱視の種類が不正乱視か角膜乱視か判断する必要があります。不正乱視がある場合は、乱視矯正眼内レンズを使用しても矯正ができません。そのため手術前に明確な判断が必要になります。
(表2)は、角膜形状解析の結果です。
茶枠で囲まれた部分の上の数値が角膜の「横方向の屈折度数」下の数値が「縦方向の屈折度数」となります。この度数の差が乱視となります。よって、乱視が無い状態では、この両方の数値が同じになります。
赤丸は、不正乱視の有無を表しています。数回測定してもこのような数字であれば、不正乱視が強く疑われるため白内障手術による乱視矯正ができないという判断をします。
この患者さまの場合は、数回測定しても赤丸の数字にほぼ変化はなく、不正乱視があると判断しました。検査結果を患者さまにご説明し、白内障手術では乱視矯正眼内レンズは使用しませんでした。
(表2)

白内障の症状が、見えにくい・かすんで見えるという症状であることから、白内障手術後は白い濁りが取れて見えやすくなると思われがちですが、水晶体の濁りを取るのと同時に、事前に精密に検査をして決定した眼内レンズを眼の中に挿入することで手術後に見えるようになります。ですので、眼内レンズを決定するための検査を精密に行うことで、手術後の見え方が希望通りになり、より見えるようになったと実感してもらえます。

中には、検査の結果、希望の眼内レンズを使用できないこともありますが、合わないレンズを使用してしまうほうが後々見え方に違和感が出たり、目が疲れたりする原因に繋がります。ご希望の眼内レンズを使用できないと判断した場合は、患者さまに出来るだけ詳しくご説明させていただきます。また、手術や眼内レンズについて疑問点やご不安なことがあれば、何度でもご相談いただきたいと思っています。

眼科は検査が多く、その検査結果に基づいて診療の方向性を決めることもあります。とくに白内障手術では、より正確な検査結果が必要であり複数回の検査となることもありますが、白内障手術前の検査の重要性をご理解いただき、手術後の見え方をより良いものにしていきたいと思っております。

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