白内障手術において3焦点の多焦点眼内レンズであるFINE VISION(ファインビジョン)HPをご紹介します。
FINE VISION(ファインビジョン)HPとは?
FINE VISION(ファインビジョン)は、これまでは厚生労働省の認可を受けておらず国内では自費診療で取り扱われていました。2010年に初めて登場した回折型3焦点眼内レンズで、自費診療として日本国内での実績もありました。元はベルギーのPhysIOL社が販売しておりましたが、この会社がアメリカのBVI社に吸収され、2023年に厚生労働省に承認により選定療養の対象となりました。
全く新しく発売された眼内レンズではなく、すでに国内の自費診療で扱われていた実績があったものが選定療養の対象に加わったということです。
FINE VISION(ファインビジョン)HPの特徴は?
レンズの特徴は、2種類の2焦点眼内レンズ(「遠方と近方」、「遠方と中間」)を組み合わせるとにより、「遠方・中間・近方」の3つにピントを合わせることが可能になりました。そのため、近方から遠方まで連続的な良好な視力となり、眼鏡装用率が下がることで裸眼で過ごすことを期待できる眼内レンズと言えます。
また、コントラスト(鮮明さ)が非常に高いレベルで改善されており、ハロー・グレア(暗いところでの「光の輪」や「光のにじみ」)の発生も抑えられています。これは、ファインビジョン最大のメリットと言えます。
FINE VISION(ファインビジョン)HPのメリットとデメリットのまとめ
■近方(35cm)・中間・遠方と連続的で良好な視力
例えば、手元作業(スマホや読書、裁縫、手紙を書くなど)から料理をする、テレビを見るなどの室内での生活や、犬の散歩や植物の水やりなど屋外での行動でも眼鏡やコンタクトレンズを使用せずに裸眼で快適に過ごすことが可能になります。
特にパンオプティクス(近方距離:40cm)と比較しても、ファインビジョンは近方距離35㎝とより近くなっているため、手元作業が多い方には向いているレンズと言えます。
■夜間でも良好な視力
ファインビジョンHPは、「アポダイズ型 回折レンズ」というレンズデザインを採用しています。「アポダイズ型 回折レンズ」は、レンズの中央部分と周辺部で異なる回折構造を持つレンズデザインとなっています。レンズ中心部分は円の内側から外側にかけて遠方に光エネルギーが振り分けられる回折構造となっており、周辺部分は遠方のみの屈折領域となっています。これによって、夜間に光を多く取り込むために瞳孔が大きくなると光エネルギーの配分が遠くに多く振り分けられるため、遠方への光の振り分ける量が大きくなり、夜間でも良好な視力を得ることができます。
■ハロー・グレアといった光の滲み(異常光視症)が少ない
回折型レンズであるため、当然ハロ・グレア・スターバーストといった異常光視症はある程度は生じますが、ファインビジョンHPは、アポダイズ型構造を採用しているためハロー・グレアが大幅に軽減されています。
ハロー・グレアとは、暗いところでの光を見た際に、「光の輪」や「光ににじみ」が見えることです。パンオプティクス(3焦点・選定療養)と比較してもほぼ同等で大幅に軽減されており、テクニスシナジー(連続焦点型・選定療養)の方がハロー・グレアが強く感じると言えます。
ハロー・グレアが強いと下の写真のように暗いところでは光の滲みが強くなるため、夜間の運転に支障が出ます。ファインビジョンHPに関しては夜間の運転で支障になることはありません。
■瞳孔が大きくなると、近方が暗くみえる
アポタイズ型構造のため、暗所で瞳孔が大きくなると、光エネルギーの配分が遠方に多く振り分けられるため遠方は見えやすく、近方・中間は見えにくくなります。よって、暗所では手元の見え方が劣るため、明るさを確保する必要があります。対してパンオプティクスは、瞳孔の大きさによらず遠・中・近と変動なく安定して見えると言えます。
■デスクトップパソコンを主に使用される方には向いていない
ファインビジョンHPは、中間距離が75㎝~80㎝のため、デスクトップパソコンを主として使用される方には、パンオプティクス(中間距離60㎝)の方が向いているかもしれません。
■強度近視の方や乱視矯正のレンズがない(対応レンズがない)
レンズパワーは+10.0Dからとなっており、度数によっては強度近視には対応しておらず、乱視矯正用レンズは販売されていません。
当院で取り扱っている選定療養の3焦点またはほぼ同じ機能を有する眼内レンズは、下の3種類となります。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
- ファインビジョンHP(3焦点) (BVI社)
- クラレオン パンオプティクス(3焦点) (アルコン社)
- テクニスシナジー(連続焦点型) AMO社(johnson & johnson社)