白内障手術をお考えで眼内レンズを検討されている患者さま、また、インターネットなどで眼内レンズの画像を見られた方などは、眼内レンズによって色が異なっていることにお気づきでしょうか。
眼内レンズの種類によって、色や形は異なっており、その中でもレンズの色が無色透明であったり、黄色味がかっていたりと色調もそれぞれに違っています。
これにはしっかり理由があり、今回は、眼内レンズの色調についてお話しします。
眼内レンズには、クリアーレンズといって無色透明な非着色レンズと、イエローレンズといって黄色く着色されたレンズの2種類が存在します。非着色レンズは古くから(1949年~)存在しますが、1991年に日本のメーカーであるHOYAが世界で初めて着色レンズを発売しました。以来、現在ではこの着色レンズが世界では主流となっています。
クリアーレンズ(非着色レンズ) イエローレンズ(着色レンズ)
着色レンズが発売された理由としては太陽光に含まれる短波長光線が加齢黄斑変性といった疾患の悪化や網膜障害を助長すると考えられていたために、この短波長光線を着色レンズでカットするためでした。
また本来、白内障の原因となる水晶体も無色透明ではなく黄色味がかっています。そのため着色レンズを挿入すると術後の色の見え方に大きな違いがないため違和感が少なくなります。一方で手術中に挿入する眼内レンズで非着色レンズを選択すると手術後の色の感じ方としてこれまでに比べてまぶしく感じたり、青っぽく見える(青視症)と感じる方もいます。
この見え方にほとんどの方は慣れてくれるのですが、中にはそのまぶしさや色の感じ方の違いに慣れずに術後に着色眼鏡を常にかけることで、まぶしさを軽減している方もいます。
そういったことが起きないように現在では黄色く着色されたレンズが使用される頻度が多くなりました。
ここまで言うと着色レンズを使うことは、いいことづくめで、世の中にある全ての眼内レンズが着色レンズに代われば良いと皆さまは思われるかもしれません。しかしクリアーレンズである非着色レンズにもメリットはあります。
その理由として光透過率が挙げられます。
着色レンズは短波長光線を遮るため青色っぽい光が眼内に入ってくるのを防ぎます。
しかし逆を言えば眼の中にはいってくる光の量が少なくなっていることでもあるのです。
つまりは非着色レンズの光透過率が着色レンズと比べて高いことになります。
多焦点眼内レンズはその構造上、各距離に光を振り分けます。
遠方・近方が見える2焦点眼内レンズは遠方と近方に、また遠方・中間・近方が見える3焦点眼内レンズは遠方・中間・近方に光を振り分けます。
例えば遠近2焦点レンズなら遠方:50%、近方:50%に光を振り分け、遠中近3焦点レンズであれば遠方:50%、中間:25%、近方25%というふうに光を振り分けます。
仮にこれが単焦点レンズであれば光は常に一定の距離に集まりますので、多少、着色レンズで光透過率が低下しても、暗さは気付かない程です。
しかし、光を各距離に光を配分する多焦点眼内レンズであれば出来るだけ暗さを感じないように光透過率を高くなければいけません。
そのため多焦点レンズ(特に3焦点レンズや5焦点レンズ)には非着色レンズも多く存在します。
患者さまの白内障の種類と挿入するレンズの色調によって、手術前と手術後で色の感じ方が異なってきます。
手術後に違和感なく自然に見えるように、患者さまの白内障の種類と希望されるレンズの種類(特に多焦点眼内レンズを希望される場合)を考えてレンズ選定をしております。眼内レンズについて気になることやご不明点などがあれば、ぜひご相談ください。