緑内障とは
網膜で結んだ光の像を電気信号として脳に伝えているのが視神経です。緑内障はこの視神経が障害されて、少しずつ見えない部分ができて、放置するといずれ見えない部分が網膜全体におよんでしまう疾患です。
日本では、後天的な失明の原因として第一位を占めており、罹患率はおよそ40歳以上の20人に1人、約5%に及ぶと推定されています。
進行は非常にゆっくりとしており、初期の頃は網膜の外周部分からすすむことが多い為、約90%の方は緑内障にかかっていることを自覚していないとも言われています。
緑内障の症状
視神経が障害されることによって、最初は見えない点ができ、徐々に拡がって視野が欠けていきます。進行が非常にゆっくりとしており、また通常は片目ずつ症状が起こりますので、脳は視野が欠けていないもう一方の眼の情報をつかって映像を補ってしまいますので、初期段階では自覚症状はほとんどありません。
その為、異常に気づいたときは、すでにかなり進行してしまっているというケースが少なくありません。欠けてしまった視力は残念ながら今の医学では元に戻すことはできませんので、早期発見・早期治療が大切な疾患の一つです。緑内障が増えてくる40歳を超えたら、定期的に眼の検査を受けておくこと大切です。
緑内障の原因
緑内障は、かつては眼圧が高すぎることによって起こると考えられていました。たしかに眼圧の高さも緑内障の原因の一つではあるのですが、現在では眼圧は正常であるのに緑内障を発症している人の割合のほうが多いという統計もあり、原因に対する考え方は変わってきています。
眼の内部は房水という透明な液体で満たされています。房水は水晶体や角膜の付け根あたりにある毛様体という組織で作られ、角膜と水晶体の間にある前房を通り、角膜と結膜の境目にある隅角からシュレム管という排水管を通って排出されています。これによって血管のない眼球内に栄養を届けながら、眼の内部の圧力を一定に保ち眼球の形を球形に保持する役割を果たしています。房水による眼球内の圧力を眼圧といいます。眼圧の正常範囲は10~21mmHgです。
ところが、このシステムのどこかで異常がおこり眼圧が上がってしまうと、それによって眼の周りの組織はダメージを受けます。特に眼底部で視神経がダメージを受けると、その部分の視覚に障害が起こり、視野が欠けていく症状が現れることになります。これが、眼圧が高いことによる緑内障が起こるシステムです。
一方で、眼圧は正常範囲内であるのに緑内障を起こすシステムについては現在のところよくわかっていませんが、正常眼圧内であっても眼の組織が弱くなっていて、正常眼圧であっても圧力に絶えられない為に発症するのではないかと考えられています。
緑内障の種類
眼球内部の房水の流れの中で、どこに異常が起こっているかによって、緑内障の種類は分けられています。大きくわけて、房水が眼球内(後房)から前房へ流れ出す出口の部分である隅角が詰まっている閉塞隅角か詰まっていない開放隅角かの2タイプ、また他に疾患がなく眼球そのものの問題によって病気がおこる原発性か他に疾患があることによって引き起こされる続発性かの2つのタイプなどの分類法があります。
原発開放隅角緑内障
房水が眼球内から隅角を通して出たすぐのところに繊維柱帯(フィルターの役割)があります。そこから房水を排出しています。このタイプの緑内障は、隅角までは異常がなく、この繊維柱帯が目詰まりしてしまった為に房水の流れが悪くなって眼圧が上がってしまい起こるものです。
正常眼圧緑内障
一般的に正常な眼圧は10~21mmHgの間とされています。眼圧がこの正常範囲内に収まっているのにもかかわらず、緑内障を起こすのがこの正常眼圧緑内障で、開放隅角型の一つとされています。詳しい原因は不明ですが、正常圧であっても眼の組織が弱っていてストレスを受けてしまう為ではないかと考えられています。
日本では、このタイプの患者さまが全緑内障罹患数の70~90%をしめていると言われています。
原発閉塞隅角緑内障
急性緑内障発作はこの閉塞が突然起こる発作で、急激に眼圧は上昇し、眼の激しい痛み、頭痛、吐き気、嘔吐などを伴い、視力が急激に低下します。この発作が起こったら救急対応で病院にかかってください。
発達緑内障
先天的な原因でルートのどこかが成長しきれない為に、房水の流れが滞ってしまうのがこのタイプの緑内障です。
続発緑内障
糖尿病や外傷、またはステロイド薬に体質があわない為の副作用などで起こる緑内障です。
緑内障の検査
正常眼圧の患者さまも多いため、眼圧ばかりではなく、総合的に眼の状態を把握しておくことが大切です。失われてしまった眼の機能は、現在の医学では元に戻すことができません。そして、緑内障は急性発作のケースを除いて進行が大変ゆっくりとしている為、気づいた時にはかなり悪化してしまっていたというケースも多いのです。
特に緑内障の発症がみられる40歳を過ぎたら、定期的に眼科で総合的な検査をうけて、早期に発見し早期に治療を開始することで、たとえ緑内障があっても、長期間日常生活に支障がない視力を保つことができます。
眼圧検査
眼底検査
光干渉断層計(OCT)検査
視野検査
隅角検査
角膜と虹彩の間にある隅角は、房水が眼球内から流れだす為の出口です。この隅角が塞がっているか、開いているかを観察することで緑内障のタイプがわかります。
緑内障の治療方法
緑内障によってダメージを受けた視神経は、残念ながらもと通りを取り戻すことはできません。視力の失われた部分はそのままとなりますので、緑内障の治療は、それ以上ダメージを受ける視神経を増やさないことが第一となります。
その為、どのタイプの緑内障でどこに障害がおこっているかを検査で特定し、進行を食いとめるために薬物療法を行うか、レーザーや手術による外科的療法を行うかを決めることになります。
点眼薬による治療
眼圧を下げる為には、房水の生産量を減らすか、房水を排出しやすいようにするかどちらかの方法があります。これらどちらかのタイプの薬を点眼することで、緑内障の保存的治療を行います。どういった薬を選択するかは、それぞれの患者さまの病状にあわせることになります。他の病気で服用している内服薬の中には、眼圧を上げてしまうものもあります。緑内障と診断された方、また緑内障の疑いがある方は、必ず眼科医に現在服用している薬を伝えていただき、相談の上で服用するようにしてください。
プロスタグランジン製剤
(左からキサラタン、トラバタンズ、ルミガン、タプロス、レスキュラ、エイベリス)
房水産生抑制製剤
(左から0.5%チモプトール、2%ミケランLA、トルソプト、エイゾプト)
房水流出促進製剤(主経路)
(左からアイファガン、グラナテック、ハイパジール、デタントール)
4合剤
(左からザラカム、ミケルナ、デュオトラバ、コソプト、アゾルガ、アイベータ、アイラミド)
レーザー・手術による外科的アプローチによる治療
外科的な治療では、房水をスムーズに排出させるための治療を中心に行います。当院ではレーザーによる治療を行っています。
レーザー虹彩切開術(LI)
閉塞隅角型の緑内障では、隅角が瞳孔に押されて房水の通り道が狭くなることで眼圧が上昇します。その為、レーザーで虹彩の上鼻側か上耳側のどちらかの外周部を小さく切開し、そこに新しく房水の出口を作るのがレーザー虹彩切開術(LI)です。
また、急性緑内障発作を起こした患者さまの場合、急激に眼圧が上昇し、数日のうちに失明する可能性が高いため、緊急的にこのレーザー虹彩切開術を行うことを検討します。
施術は点眼麻酔をして、専用のコンタクトレンズを装着した形で行います。時間は10~15分程度で入院の必要はありません。この施術は従来のレーザー機器では、角膜が白く濁ってしまう水疱性角膜症を発症するリスクが高かったのですが、当院ではYAGレーザーという特殊なレーザー機器を併用しているため、このリスクはほとんどありません。
緑内障手術
症状が軽微なうちの点眼治療や少し進行してからのレーザー治療が難しくなると、外科手術による対応となります。当院では、手術が必要になるケースでは提携している施設の整った病院を紹介しております。
線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
繊維柱帯を切開して、目詰まりしているフィルター部分の通り道を開ける手術です。術後、一時的に眼内出血がおこり視力低下する場合がありますが数日で改善します。繊維柱帯切除術より効果は低めですが、長期的な合併症などに対する安全性の高い方法です。
線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
房水のフィルターである繊維柱帯の一部を切除して、結膜の中に房水を通すバイパスを形成する手術です。手術後には、定期的に眼圧を測定して経過観察をしていく必要があります。
緑内障手術は連携医療機関をご紹介します。
検査・診断の結果、緑内障手術が必要な場合は、下記の連携機関をご紹介します。
- 東大病院
- 東京医科大学病院
- 河北総合病院
- 順天堂大学医学部付属練馬病院
- 防衛医科大学病院